埼玉県川口市で公認会計士・税理士をしております、奥中です。
今回は、freeeで帳簿をつけているものの、決算書を見たら現金の残高がマイナス残高になっているケースをご紹介します。
財布にマイナスのお金なんて入っていないのに、これはどういうことでしょうか?
これは、原因も直し方もはっきりしているので、順番に見ていきましょう。
本記事は、freee認定アドバイザーである当事務所が、個人事業主・フリーランスの方向けに「freeeでよく起きるつまずき」を解説します。
1. なぜ現金残高がマイナスになるのか
原因はほぼ一つです。
自分のポケットマネー(プライベートの財布)で払った経費を、freeeの「現金」口座で決済したことにしている。
たとえば、以下のような流れです。
- 打ち合わせのカフェ代1,200円を、私生活で使っている財布から支払った
- freeeで経費を登録するとき、決済口座の欄に表示されていた「現金」をそのまま選んだ
- これを1年間くり返した
freeeの「現金」口座は、事業用として財布や金庫に分けて管理しているお金を表す口座です。事業用の現金を実際には用意していないのに現金口座から支払い続けると、入金がないまま出金だけが積み上がり、残高がどんどんマイナスになっていきます。
現金の入金取引を登録してないのに支出だけ登録していることがマイナス残高の原因です。
2. マイナスのまま放置すると何が困るか
「所得の金額さえ合っていれば問題ないのでは?」と思われるかもしれません。
たしかに経費の金額自体は正しく計上されているので、その年の所得税額がすぐに変わるわけではありません。
ただし、次の点で不利益が生じます。
✅ 貸借対照表の信頼性が下がる
現実に存在しえない「マイナスの現金」が決算書に載る状態になり、もし税務調査が入った場合は、帳簿全体の正確性を疑われるきっかけになります。
✅ 青色申告特別控除(65万円・55万円)の前提が揺らぐ
これらの控除は、正規の簿記の原則にしたがって記帳していることが要件です。現金の残高が実態と合っていない帳簿は、その要件を満たしているとは言い難い状況になります。
✅ 翌年以降さらに膨らむ
原因を直さない限り、マイナスは毎年積み上がります。3年、5年と経ってから直そうとすると、遡って確認する取引の量が一気に増えます。
✅ 融資審査で説明を求められる
金融機関に決算書を提出したとき、マイナスの現金は必ず目に留まります。
3. 直し方:2つのアプローチ
アプローチA:原因となった取引そのものを直す(おすすめ)
いちばんきれいな方法は、当期中の取引であれば、間違って「現金」で登録した取引の決済口座を「プライベート資金」(「事業主借」勘定)に変更することです。
freeeの「プライベート資金」は、事業用のお金とプライベートのお金を分けていない個人事業主のために用意された「口座」で、この口座を使うと勘定科目が自動的に「事業主借」または「事業主貸」になります。
該当する取引が数十件程度であれば、取引一覧から1件ずつ決済口座を差し替えるのが確実です。
アプローチB:まとめて調整仕訳を入れる
取引件数が多くて1件ずつ直すのが現実的でない場合は、期末時点でまとめて調整します。入れる仕訳はこれだけです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | ×××円 | 事業主借 | ×××円 |
金額は、期末時点でマイナスになっている残高の絶対値です。たとえば現金が△280,000円なら、280,000円で仕訳を入れれば残高はゼロになります。
「プライベートの財布から、事業用の現金へお金を入れた」という記録を、あとからまとめて入れるイメージです。
なお、現金も事業主借もどちらも貸借対照表の科目なので、この修正によってその年の所得金額や税額が変わることはありません。日付を期末にまとめても損益への影響はないので、その点は安心して大丈夫です。
事業主借の残高は、翌年の期首に「元入金」へ振り替えられます。返済が必要な借入金ではなく、残高を合わせる必要もないので、金額が大きくなっても心配不要です。
4. 再発防止:設定と運用を変える
修正仕訳を入れても、翌年また同じことが起きては意味がありません。ここがいちばん大事なところです。
ここは、一人でお仕事をしている方であってもルールを決めておく必要があります。「一人だから自分が分かってさえいればなんでもOK」とはいきませんのでご注意ください。
✅ 決済口座は「現金」ではなく「プライベート資金」を選ぶ
自分の財布から払った経費は、すべて決済口座を「プライベート資金」にします。これだけで事業主借として処理され、現金残高がずれることはなくなります。
おすすめはfreeeの詳細設定で、取引関連設定>決済口座のデフォルトを「プライベート資金」に設定しておくことです。
こうすることで、ご自身でレシートから仕訳登録する際に、決済手段がデフォルトでプライベート資金となります。もちろん、そうでない場合は登録時に変更が可能です。

✅ 「現金」口座は、本当に事業用の現金を分けている人だけが使う
レジの釣銭や事業専用の小口現金を実際に管理している場合は「現金」口座を使ってください。
逆に、事業専用の現金箱を持っていないなら、freeeで現金口座を使う場面は基本的にありません。
✅ 事業用の口座・カードを1つ作るのが最短ルート
そもそもの話として、事業用に、銀行口座とクレジットカードを用意して、プライベートとは分けることがいちばん楽です。
口座同期で明細が自動で取り込まれるようになり、プライベート資金を使う場面自体が減ります。
✅ 月に一度、残高をチェックする
月末にレポートで現金・預金の残高を確認する習慣をつけておけば、マイナスが数十万円に育つ前に気づけます。
5. こんなときは専門家に相談を
次のようなケースは、自己判断で処理すると別のズレを生むことがあります。
- マイナスが数年分にわたって積み上がっている
- 過去の申告内容を修正すべきか判断がつかない
- 事業用とプライベートの支出が混ざっていて、どこから手をつけるか分からない
- 開業時の開始残高そのものが正しく設定されているか不安
参考リンク
- 【個人】プライベートの資金で事業の経費を支払った場合の登録方法(freeeヘルプセンター)
- 【個人】プライベート兼用の口座の会計処理(freeeヘルプセンター)
- 国税庁「帳簿の記帳のしかた」
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除
おわりに
現金残高のマイナスは、freeeの使い方の問題であって、経理のセンスの問題ではありません。
「プライベート資金を使う」というルールを一つ覚えるだけで、次からは起きなくなります。
奥中則行公認会計士・税理士事務所では、戸田市・川口市・蕨市を中心に、freeeを使った個人事業主の方の記帳サポート・確定申告のご相談を承っています。freee認定アドバイザーとして、設定の見直しから過去分の整理まで対応可能です。
「自分の帳簿、これで合っているのだろうか」と気になった方は、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。
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次回(第2回)は、「銀行口座の残高がfreeeと合わない ― 自動取込と手動登録の二重計上」を取り上げます。
